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酒道ニュース

菌塚とみやこ流

11月23日の特別例会で訪れた「菌塚」について、家元がふれている一文をご紹介します。

 

 酒造りは「一に麹、二に酛、三に造り」という。麹を作り、酵母を育て、「もと」を造る。何億という雑菌に抗して日本酒酵母のみを純粋に生やす、巧みな方法を昔の人は編み出した。「酛」の1グラムに3億といわれる日本酒酵母が活躍するのである。

 人間の労働と技は、この微生物の発酵作用とともにある。すぐれた杜氏ほど、この関係を深く認識している。人間のすばらしい能力や技は、けっして人間自身のみの所産ではなく、自然の偉大さの中にはじめて成立しうる。

 発酵微生物の存在なしに日本のお酒は語れまい。京都・一乗寺竹之内の名刹、曼殊院に、菌塚 がある。この墓標には、微生物を供養するという独特の気持ちが込められている。微生物=ミクロ の 巨人たちへの敬虔な思いは、人間と自然の関係において、人間社会のみの有益と経済的効果を狙い続けてきたことへの反省の認識でもある。

 菌の尊さを讃え、自然の生命力の中に人間が包み込まれ、人間の自然への能動性が、この上にはじめて成立するという認識だ。私自身化学を専攻した学徒の一人として、こうした「菌塚」への合掌がよくわかるし、大切にしたいと思っている。

 

 さて、私は菌塚を訪ねるまでは、この塚を武田薬品の研究所の施設と誤解していていました。ところが、ほとんど無名の一個人が住職の協力を得て、建立しているのでした。無名の人の営為、きっと家元とつながっているに違いありません。

                                                                                 2009.12.6

                                           天野博

 



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