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酒道ニュース

2009年12月

菌塚とみやこ流

11月23日の特別例会で訪れた「菌塚」について、家元がふれている一文をご紹介します。

 

 酒造りは「一に麹、二に酛、三に造り」という。麹を作り、酵母を育て、「もと」を造る。何億という雑菌に抗して日本酒酵母のみを純粋に生やす、巧みな方法を昔の人は編み出した。「酛」の1グラムに3億といわれる日本酒酵母が活躍するのである。

 人間の労働と技は、この微生物の発酵作用とともにある。すぐれた杜氏ほど、この関係を深く認識している。人間のすばらしい能力や技は、けっして人間自身のみの所産ではなく、自然の偉大さの中にはじめて成立しうる。

 発酵微生物の存在なしに日本のお酒は語れまい。京都・一乗寺竹之内の名刹、曼殊院に、菌塚 がある。この墓標には、微生物を供養するという独特の気持ちが込められている。微生物=ミクロ の 巨人たちへの敬虔な思いは、人間と自然の関係において、人間社会のみの有益と経済的効果を狙い続けてきたことへの反省の認識でもある。

 菌の尊さを讃え、自然の生命力の中に人間が包み込まれ、人間の自然への能動性が、この上にはじめて成立するという認識だ。私自身化学を専攻した学徒の一人として、こうした「菌塚」への合掌がよくわかるし、大切にしたいと思っている。

 

 さて、私は菌塚を訪ねるまでは、この塚を武田薬品の研究所の施設と誤解していていました。ところが、ほとんど無名の一個人が住職の協力を得て、建立しているのでした。無名の人の営為、きっと家元とつながっているに違いありません。

                                                                                 2009.12.6

                                           天野博

 

新嘗祭にちなみ特別例会

11月23日は勤労感謝の日、また新嘗祭。新嘗祭はお酒造りの原点、うまい米の出来を感謝する日です。この新嘗祭にちなみ、洛北の名刹、曼殊院の境内にある「菌塚」を訪ねました。この「菌塚」訪問は、わが酒道みやこ流家元、滝本さんの、念願でしたが、みやこ流発会を記念して、決行しました。家元は「研究者、学会関係者でないと訪問は認めてない」という寺務所職員に対し、「みやこ流家元だ」と言ったかどうかはつまびらかではありませんが、無事、関門を通過、「菌塚」訪問に成功しました。苔むした塚を秋の静かさにじっと耐えているようでした。まるで、ラッシュのように人がこのお寺に殺到しているのに、塚の周りは「あまりの秋の静けさに---」(八木重吉)でした。写真は後日、公開しますね。

そのあと、家元ごひいきの「旬彩いかわ」で例会。家元のこだわりで、まず「からすみ」。みやこ流は最初に「からすみ」からという流儀。そして、お酒は「玉川」。フィリップ・ハーパーさんの作品です。といいますのは、この例会にアイルランド人のジャーナリスト(英国発行の雑誌の特派員とか)が橋本先生の紹介で参加していたからです。日本有史以来初めての欧米人杜氏」(家元)とハーパーさんに触れ、このまったりとした古酒の風情を味わいました。ハーパーさんが1712年の文献を読み解いて作ったというお酒。人のつながりの不思議さに驚かされますね。

そのあと、「花鳩」(広島)、「開運」、「水芭蕉」、「鳳凰美田」。

みやこ流発会記念にゲスト、家元の友人でアララギ派歌人、田中保子さんをお呼びしていました。田中さんから、お酒にちなむ短歌をいくつか披露していただきました。「短歌をしていれば、年は----」とおっしゃっておられましたが、82歳だそうです。本当にお元気で感心しましたね。参加していた私の両親は86歳でした。上手に年をとっていきたいものです。英国からのジャーナリストをはじめ、新人さんが二人。後藤さんは元高島屋グランドホール支配人、高村さんは「甘辛手帳」編集者。高村さんとお隣どうしだった、私の父親が二人の共通の友人の話題で盛り上がっていました。

                          2009.12.6

                                    天野博

12月例会のご案内

11月23日の新嘗祭特別例会において、酒道みやこ流の発会が披露されました。いよいよ、「旨酒の会」も発展し、この酒道みやこ流の例会として、今後、開催されますので、変わらぬご愛顧をお願い申し上げます。

先の例会のご報告はすべきですが、皆様のご都合もありましょうから、12月例会の日程を取り急ぎ、ご案内いたします。

日時:12月15日(火曜日)午後7時半から

会場:寺町四条下る「彌光庵」

テーマ:新嘗祭から搾り出し